石炭(黒いダイヤ)

石炭(せきたん)とは、地質時代の植物などが造山運動により地中に埋もれ、そこで長い期間、地熱や地圧を受け、炭化したことにより生成した物質の総称。石炭は炭素のほか、燃焼成分として水素と酸素、他に硫黄、灰分、水分などを含有する。

石炭はヒトが生産活動を行う際の原料や燃料として利用されている。しかし、その際に発生する窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、二酸化炭素などといった有害な副産物の割合が、石油やガスなどと比較して最も高く、世界各地で大気汚染の原因として問題になることも多い。炭鉱全盛のころは、周囲に好景気をもたらしたことから「黒ダイヤ」とも呼ばれた

構造
死んだ植物やプランクトンが地層の堆積によって地下に埋まり、高圧力・地熱・バクテリアの作用を受けて炭化したもの。元の植物は古生代後半(石炭紀)のものが多いが、日本では古第三紀のものが多い。

需要・埋蔵量
2000年現在、世界の消費は約37億t、総一次エネルギー消費の27%を占める。可採埋蔵量は、世界で約9800億t(2000年)。生産量と消費量に関しては中国とアメリカで5割以上を占めている。

化石燃料の中では、液体で扱いやすい石油が主流となっているが、石炭は石油に比べると埋蔵量が多く特定の地域に偏らずに埋蔵されている。また、東アジアでは現在も需要が高い。

輸入量は日本が一番多く、全世界の23.8%の約1億5000万t。オーストラリア・カナダ・インドネシア・中国などからの輸入がほとんどである。

用途
発電・製鉄などの燃料として使われる。コークス・コールタール・化学薬品などの原料ともなる。また化学処理による液化や、化学薬品との混合による液体燃料化も可能である。


石炭の種類
石炭化度の指標である燃料比(固定炭素/揮発分)によって分類する。 無煙炭、瀝青炭は「高品位炭」、亜瀝青炭、褐炭、泥炭は「低品位炭」とも呼ばれる。


無煙炭
無煙炭(むえんたん)。英語では「anthracite」。石炭化度が高く、燃やしても煙の少ない良質の石炭。炭素量は93~95%。家庭用の燃料やカーバイドの原料に使われる。然し揮発分が低い為、着火性は悪い。

瀝青炭
瀝青炭(れきせいたん)。英語では「bituminous coal」。粘結性が高く、コークス、製鉄用燃料に使われる。炭素量は70~80%。

亜瀝青炭
亜瀝青炭(あれきせいたん)。英語では「subbituminous coal」。瀝青炭と性質は似ているが、水分を15~45%含むため扱いにくくあまり使われない。ボイラーなどに使われる。ただし豊富な埋蔵量を誇るため、現在効率的な利用への研究が進められる。日本で生産されていた石炭の多くも亜瀝青炭であった。

褐炭
褐炭(かったん)。英語では「brown coal」。低品位の石炭。石炭化度は低く、水分・酸素が多い。練炭・豆炭などの一般用の燃料として使用される。その名のとおり色は褐色。

亜炭
亜炭(あたん)。英語では「lignite」。褐炭の質の悪いものに付けられた俗名。褐炭も含めて亜炭と呼ぶ場合もあり、その基準は極めて曖昧である。学名は褐色褐炭。太平洋戦争(大東亜戦争)中に燃料不足のため多く利用された。現在は肥料原料などとしてごく少量が利用されている。埋れ木も亜炭の一種。

泥炭
泥炭(でいたん)。英語では「peat」。泥状の炭。石炭の成長過程にあるもので、品質が悪いため工業用燃料としての需要は少ないが、日本では戦争末期に貴重な燃料として使われた。また、ウイスキーに使用する大麦麦芽を乾燥させる燃料として香り付けを兼ねて使用される。このほか、繊維質を保ち、保水性や通気性に富むので、園芸では腐植土として培養土に混入し土質を改善させるためによく使用される。酸性であるので、アルカリ土壌を好む植物に使用する場合は石灰などで中和する必要があるが、逆にアルカリ土壌を中和させるために使われることもある。またこれをプレスして播種、育苗用の植木鉢としたものもあり、時間がたつと土と同化するので植物を抜かずにそのまま植え替えることができる。

アドセンス画像336x280