黒い三連星

黒い三連星(くろいさんれんせい)とは、

アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する架空の部隊の名称。ガイア、マッシュ、オルテガの3人のモビルスーツパイロットによるチーム。本頁で説明する。
『機動警察パトレイバー』後期OVA 第6話のサブタイトル。

黒い三連星
正式名称はジオン公国軍のキシリア・ザビ率いる突撃機動軍第7師団第1MS大隊司令部付特務小隊。A・ガイア大尉を中心に、開戦以前の教導機動大隊第2中隊D小隊に在籍していたパイロットが中心となって構成されている。当初はダークシーブルー、あるいはダークグレーで塗装されたMS-05BザクIを乗機としており、一年戦争終結後までの間に、数回に渡りメンバーチェンジが行われていたが、宇宙世紀0079年に勃発した一年戦争初期のルウム戦役直前よりガイア、マッシュ、オルテガの三人に固定され、正式に部隊が結成された。彼らはジェットストリームアタックと呼ばれる攻撃フォーメーションで連邦側の部隊に攻撃を敢行、連邦軍艦隊の総司令であったレビル中将(当時)の乗る旗艦アナンケを撃破し、脱出を図ろうとするレビルを捕虜にした功績からエースパイロットとしてその名をとどろかせる事となる(※)。また、この功績からMS-06S型ザクIIが与えられている。

「黒い三連星」の異名は、このMS-06S型以降に彼らの乗機が黒を基調としたパーソナルカラーに塗装されていたことによる。その後、彼らは乗機をMS-06R-1A高機動型ザクII、MS-09ドムに換えているが、このパーソナルカラーは引き継がれており、ドムにおいては、この塗装が量産機の正式塗装に採用されている。また、開戦後の0079年3月にMS-06Sのオーバーホールにともない、一週間の後方勤務を命令され、古巣の教導機動大隊の特別演習に参加した際には、講習用として特別に黒いカラーリングが施されたMS-05Bが用意された。

その後の彼らは、同年11月、地球のオデッサに援軍として差し向けられる。当時の最新鋭モビルスーツ「ドム」を与えられたが、オデッサの後方撹乱を命じられていたホワイトベース隊と交戦し、全滅している。

開戦前からその能力ゆえ、軍内での立場を優遇されていた彼らは、独自の指揮系統により行動することを許されていた。彼らの戦果は三位一体の攻撃を身上としていたため、逆にスコアは1/3とされ、個人単位ではそれほどではない。コンビネーション攻撃により14隻もの艦船を撃沈していたが、これも3で割るとひとりあたり4.6隻となり、ぎりぎりエースには届かない計算となる。たが、彼らの結束は固く、あくまでチームひと組の戦果をすべてとしており、その点に関する不満はなかったという。その強面の外見とは裏腹に、コミック作品『MS戦記』では、後輩の若手パイロットを気遣う優しい一面も見せている。

※このルウム当時に彼らが搭乗した機体には複数の説が存在する。「シーグレーで塗装されたMS-06C」、「頭部をMS-05型に換装したMS-06C」、「MS-05をベースとしたMS-06との中間試作型」など、どれも個性的な物ばかりである。
彼らがドム以前の愛機としてザクに搭乗していたとするメディアにおける最初の記事は、特撮専門誌『宇宙船』に掲載された模型写真が最初であり、「MS-05をベースとしたMS-06との中間試作型」がそれにあたる。ゲーム『ギレンの野望』の作画に関わった土器手司氏の証言によれば、この中間試作型の作例が記憶の片隅に残っていたメカ作画スタッフの提案で「頭部をMS-05型に換装したMS-06C」がセガサターン版のアニメムービーパートの三連星搭乗機として登場する運びになったという。ただ、いささか曖昧な記憶であり、資料確認する手立ても無かったらしく、元ネタとは仕様が異なっているのはご愛嬌である。なお、「シーグレーで塗装されたMS-06C」に関してはMSVの解説文が初出。これを受けSDガンダムの初期ガシャポンに付属の写真シールでは「第1次量産型ザク(黒い三連星機)」の名前で塩ビ人形を改造した模型作例が発表されている。このシリーズでは他にも06S、06R-1A、そしてヴィジュアル化される機会が極めて少ないグレーで塗装されていた時期の05Bも(SDではあるが)再現されている。
漫画版である『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の劇中、兵卒から叩き上げた士官・準士官として登場、ドズル・ザビが指揮するモビルスーツ開発計画にテストパイロットとして携わっている。同じくテストパイロットとして招かれたランバ・ラルとの模擬戦闘も行なっており、宇宙世紀初のモビルスーツ同士の戦闘「雨の海海戦」も彼らとシャア・アズナブルによって行われている。ランバ・ラルはドズルに招かれた際に昇進した彼らに会った際、「あの兵隊やくざどもが士官?」と驚いており、過去の素行の悪さが伺える。兵隊あがりであることは、彼らにとって一種のコンプレックスでもあるようで、一時士官学校の履歴を抹消され、一兵卒に格下げされながらも功績により早々に再任官されたシャアに対し、(オルテガは特に)強いライバル意識を抱いているようである。なおこの作品ではガイアのファーストネームは「ミゲル」である。

ジェットストリームアタック
ジェットストリームアタックとは、黒い三連星が使用した攻撃フォーメーションの名前であり、もともとは宇宙での対艦船戦闘用に考案されたものであったらしい。

この技の攻撃手順は、まずメンバーそれぞれが搭乗したモビルスーツが縦一列に重なって並び、真正面からみると1機のみが攻撃対象に向かっているように見せかける。そしてそのまま攻撃対象に向かって接近し、1機目が対象に一撃目を加えてすぐさま列から離れ移動、直後に2機目が同様の箇所に攻撃を加える。これを3機目まで実行し、攻撃対象に深手を負わせるというものである。

彼らの死後もモビルスーツ戦における古典的な戦術手段としてパイロットには認知されていたようで、UC.0090年代にこれを使用した例が確認されている。

また、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』のアナザーストーリーにあたるゲームブック『消えたガンダムNT』(望月雄太郎、スタジオ・ハード著)ではサイクロプス隊がゲルググやザクといった混成の機体群でジェットストリームアタックを行っていた。この他にも『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』において、ドムトルーパーを駆るヒルダ、マーズ、ヘルベルトの三人組が同名の連携攻撃を行い、多大な戦果を挙げている。


ガイア
ガイアは黒い三連星のリーダーで髭面の男。階級は大尉(声:テレビ版政宗一成、映画版徳丸完)。アニメ版第24話でガンダムにジェットストリームアタックをかけた際、先頭を切ってガンダムに向かっていくが、乗機のドムはジャンプしたガンダムの踏み台にされてしまい攻撃はかわされてしまう。その際にマッシュ機が撃墜され後退する。そして第25話でオルテガと共に再度ガンダムに挑むが、遂にオルテガも倒されてしまう。怒りに燃えてガンダムをGスカイから蹴落とし、上空からヒート剣を振りかぶって襲いかかるが、交錯した際にビームサーベルで機体を貫かれ撃破される。彼の最期の台詞には無念さが現れている。 アニメ映画版ではホワイトベース隊との戦闘は2回から1回に減らされ、ガイアは上記24話での戦闘の後にガンダムのビームサーベルに貫かれ戦死している。その際最期の台詞も、他の二人への詫びの形から「たった一機のモビルスーツに自分たち三人が敗れるとは」という意味の言葉に改められている。

彼は一年戦争初期に起こったルウム戦役において、戦闘指揮を執っていたレビル中将(当時)が乗っていた旗艦「アナンケ」を撃破、そのとき脱出したレビル中将を捕獲し、捕虜とした功績が認められ、ジオン十字勲章を授与されている。

映像版準拠の一部の資料では「A・ガイア」と表記されているが、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」でのフルネームはミゲル・ガイアである。

コミックボンボン連載の近藤和久の漫画「MS戦記」では、主人公ブラウンと出会い、新米兵士であるブラウンをドムのコクピットに乗ることを許したりと好人物に描かれている。また、徳光康之の漫画では国防軍(ジオン軍の前身組織)入隊前日の話が描かれてある

マッシュ
マッシュは黒い三連星のメンバーの一人で隻眼の男。階級は中尉。第24話でガンダムにジェットストリームアタックをかけた際、2番目にガンダムに攻撃を仕掛けるが、マチルダ中尉のミデアが割って入った際にスキを突かれ、前列のガイア機を踏み台にしたガンダムのビームサーベルによって乗機のドムが貫かれた後そのまま真っ二つに両断され撃破、戦死する。ちなみに全くと言っていいほど台詞がなく、声優は居ない(彼の叫び声などは永井一郎が演じているが、『ギレンの野望』シリーズや『スーパーロボット大戦シリーズ』では、佐藤正治が演じている)。また台詞も然ることながら映像でも何故かガイアやマ・クベの陰に隠れる形で明瞭に描かれず、ドム搭乗後もガイアやオルテガには再々カットインが入るものの、彼には全く挿入されていない。ここまで徹底されるとかなり意図的な演出のように思えるが理由は不明。

オルテガ
オルテガは黒い三連星のメンバーの一人で巨漢。階級は中尉(声:二又一成)。面長の彼はヘルメットは特注の物を使用していた。第24話でガンダムにジェットストリームアタックをかけた際、3番目にガンダムに攻撃を仕掛けようとするが、マチルダ・アジャンの乗るミデア輸送機がフォーメーションの最中に突撃を敢行、彼のドムは体当たりされる。しかしオルテガの乗るドムはミデアの操縦席めがけて両手を組んで打ち下ろし、これを撃破(この時の攻撃法は後に、徳光康之の漫画で『オルテガ・ハンマー』と命名される)、しかしマッシュが戦死した事で二機は後退、その後第25話でガイアと共に再びガンダムに挑むが、Gスカイに乗ったガンダムにビームサーベルで胴斬りにされ敢え無く戦死する。 アニメ映画版ではホワイトベース隊との戦闘は2回から1回に減らされ、オルテガはガイア機と組み合ったガンダムを狙い停止したところを、これが初陣であったセイラ・マスのコア・ブースターの攻撃によって戦死している。

主な搭乗機
時期によって仕様は異なるが、いずれも当初より彼ら独自のパーソナルカラーともいえる一般機とは異なる塗装が施されていたのが特徴である。特にMS-06S型以降に採用した黒と紫を基調としたあまりにも有名なパターンは、彼らの通り名の由来ともなり、彼らの死後もその栄誉を称えてMS-09の制式塗装に採用されたほどである。

MS-05B ザクI
MS-06C,S ザクII
MS-06R-1A 高機動型ザクII
MS-09 ドム

この他に、一年戦争を題材としたシミュレーションゲームソフト『ギレンの野望』シリーズでは、三連星がアニメ劇中で描かれたように全滅するルートを辿らず、生存した別の歴史の可能性も用意されている。以下はその『if』の世界で彼らが搭乗する機体である。いずれもザクやドムのように、彼らの愛機の証である黒と紫のカラーリングが施されている。

MS-14B 高機動型ゲルググ
MS-15B ギャン高機動型

Tips
『ガンダム』と並ぶ富野由悠季監督作品『聖戦士ダンバイン』の第34話には、オーラバトラー・ビアレスを操る「クの国の赤い三騎士」としてガラミティ=佐藤正治、ニエット=戸谷公次、ダー=高宮俊介の三人が登場。名前は異なるが、そのキャラクターは黒い三連星そのままのセルフパロディである。三身一体攻撃「トリプラー」を得意技とした。「俺を踏み台にした!?」ではなく「ふんずけてった!」のセリフは有名。

また、上記でも解説しているが、ファーストガンダムとは世界観設定の異なる『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』においても三連星そのままのセルフパロディ的な役回りとして、ドムトルーパーを駆るヒルダ、マーズ、ヘルベルトの三人組が登場している。

『機動警察パトレイバー』にもパロディというかたちで黒い三連星ネタが頻出する。コミック版、TV版に登場したSSS(シャフト・セキュリティ・システム)のレイバーはジェットストリームアタックを敢行するが失敗していた。また、後期OVAの第六話のサブタイトルはその名も『黒い三連星』。連続テロ犯の通称「黒い三連星」(脇の下に三つのホクロがある)が登場。いずれも劇中の登場人物が『ガンダム』を視聴していて、その影響で三連星をネタにしていたという裏設定が存在する模様。

2004年に放映されたアニメ『焼きたて!!ジャぱん』第29話では、3人組のパン職人としてゲスト?出演し、月面上でジェットストリームアタックを披露した。あくまで、スタッフの悪ノリによるリアクション表現ではあるが、明らかにガンダム本編を意識した演出がされていた。声優は、ガイア(もどき)=稲垣隆史、マッシュ(もどき)=牛山茂、オルテガ(もどき)=郷里大輔であった。

また、『フルメタル・パニック!』第14話には、「通常の三倍の速さ」を誇る「赤い三連星」による「レッドストリームアタック」と、シャア・アズナブルも含めた引用のパロディがある。

PS2のゲーム「ジオニックフロント」のCMでは、ガン黒の太った三人の女子高生がサラリーマンを踏みつけて走り去るパロディーを披露した。

'99年、後楽園ホールで行われた「みちのくプロレス」の興行で、サスケ・ザ・グレート、マスクド・タイガー2世、NANIWAの三名がドム風のオーバーマスクを着用、忍者刀の模造刀を背負い「ジェットストリームアタック」を敢行した。

他作品で扱われる事の多い「ガンダム」からのパロディだが、このように、特に三連星はその印象的で個性の強いキャラクター故に、比較的ネタにされる機会が多い様である。メディア上での引用に留まらず、「ガンダム」に影響を受けた世代は、三つ並んだ(特に黒く塗られた)ものを三連星になぞらえる傾向があり、東京工業大学に設置された三台のシンドラー社製エレベータや、スターフライヤーに所属する、三機の黒く塗られた旅客機なども人々から「黒い三連星」のニックネームで親しまれている。

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